新しい年に向けて
激変する世界情勢にほんろうされながら、いつの間にか年の瀬を迎えてしまいました。このようなとき、自分を見失わないためには、ゆったりと振り返りの時をもつことが大切です。
このところ編集子は不思議と、自分が学生になったばかりの頃のことを思い出します。今でこそ学生に「本を読め」と言っていますが、そういう自分はどうかというと、高校までは、スポーツに明け暮れ、本はまったく読んでいませんでした。受験勉強は参考書に頼るのみでした。数学は好きだったので問題集をよく解いていましたが、他の科目は、いやいやながら暗記を続けました。
大学に入ると、まったく新しい経験をしました。「調査法」という授業で、KJ法というのを習ったのですが、思い付く事をどんどんラベルに書き、発想の近いラベルを自由にグルーピングしてゆくうちに、思いもよらない発見に到達することができる、というものでした。こんな方法があったのか!と思っていたら、実はこれの種本だ、と先生が紹介したのが、川喜田二郎著『発想法』でした。KJ法という名前は、川喜田のKと二郎のJの二字を当てたものです。
その本を開くと、従来の研究は、もっぱら本を読んで考える「書斎研究」と、仮説を立てては検証する「実験研究」の2つが主流だが、実は、この両方をつなぐ重要な方法として「野外研究」がある、と主張していました。実験研究の仮説をたてるためには、いったん(フィールド)に出て対象物をじっくり観察し、そのものの構造について洞察することが大切であるが、そのための方法論があるのである。そして、川喜田は、自分の考案したKJ法の使用を勧めました。
編集子は、仮説をたてるにも方法がある、ということを体験で知り、驚いたのです。もちろんKJ法が全てではありません.他にも良い方法がたくさんあると思います。最近話題のマインドマップもそのひとつです。また誰かが作った方法などに頼らず、自分なりのやり方で仮説を立てて成功している人も沢山いると思います。
しかし、大切な事は、問題も答えも、外から与えられる物ではない、ということです。問題も答えも、自分が体験し観察することの中から感じ取り、考察し、発見して行くものだ、ということです。そして、答えは決して正解ではなく、自分が決断して行動するための足がかりに過ぎない、ということです。これを経験によって学ぶのが大学での勉強である。編集子は、大学入学早々にこのことを学んだのでした。ここで得た確信は、いまも変わっていません。
ものごとをよく観察し、洞察するためには、本を読むことは大切です。そして人とよく議論することが大切です。いま授業で、本を読め、と繰り返し言うのは、その確信があるからです。
新しい年は、自分の体験をもう少し学生の皆さんと分かち合いたいと思います。そして自分もまた若い世代の方からよく学んで行きたいと思います。未来は若い人たちのものですからね。
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